Netflixの最新作『終わらない週末』は、サスペンスとテクノロジーの融合を描いた話題作です。
ジュリア・ロバーツ、マハーシャラ・アリ、イーサン・ホークという豪華キャストに加え、バラク・オバマ元大統領夫妻が制作に関わったことで注目を集めています。
サム・エスメイル監督によるこのスリラー映画は、現実とフィクションが交錯するストーリーが見どころ。
人種差別やサイバー攻撃など、現代社会の不安を描き出し、観る者に強い印象を残す本作は、2023年12月の配信開始以来、本作に対して多くの意見や考察が飛び交っています。
この記事では、そんな「終わらない週末」の隠されたメッセージについて考察していこうと思います。
ジュリア・ロバーツ、マハーシャラ・アリ、イーサン・ホーク、マイハラ、ケヴィン・ベーコン出演。
もう、日常には戻れない。
忍び寄る”その日”を描くサスペンス映画『終わらない週末』は、Netflixで独占配信中。#終わらない週末 #LeaveTheWorldBehind pic.twitter.com/IXwI558IqF
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) December 19, 2023
あらすじ
映画『終わらない週末』は、家族旅行を楽しもうと豪華な別荘に向かうアマンダ一家を主人公にして始まります。
しかし、到着早々にサイバー攻撃が発生し、日常生活は一変します。彼らの元には、別荘のオーナーであるG・Hとその娘が家の前に現れます。
2つの家族は迫り来る恐怖と不安に直面しながら、インターネットのない世界で情報を集め、取り残された世界から生き残るために必死に動く、そんな姿を描いた作品です。
制作陣と豪華キャストの紹介
この作品は、人気ドラマシリーズ「MR. ROBOT」のクリエイターによって監督・脚本されています。
ジュリア・ロバーツ(アマンダ役)
アマンダの役柄:
アマンダはニューヨークの広告会社で重役を務める、成功を手にしたキャリアウーマン。忙しい日常から解放されるために豪華な別荘をレンタルして週末を過ごすことに。避難を求めて現れたスコット親子に対しては、慎重な対応を取ろうとし、彼らを追い返そうとします。
ジュリア・ロバーツ代表作:
『ノッティングヒルの恋人』(1999)、『食べて、祈って、恋をして』(2010)、『白雪姫と鏡の女王』(2012)、『ワンダー 君は太陽』(2017)など、多くの代表作を持つ女優です。
マハーシャラ・アリ(GHスコット役)
GHスコットの役柄:
GHスコットは、ニューヨークで金融アドバイザーとして成功を収める男性で、娘のルースとともに別荘にやってきます。彼は、謎の停電がただのトラブルではなく、大きな危機の前兆であると直感します。
マハーシャラ・アリの代表作:
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008)や『トゥルー・ディテクティブ』(2014-)で知られる実力派俳優で、『ムーンライト』(2017)でアカデミー賞助演男優賞を含む数々の賞を受賞し、『グリーンブック』(2018)でも同じくアカデミー賞とゴールデングローブ賞を受賞しています。
イーサン・ホーク(クレイ役)
クレイの役柄:
クレイはアマンダの夫で、メディア学の教授。意志が強く頑固な妻とは対照的に、気楽で穏やかな性格です。謎の停電に直面した際には、危機を乗り越えようと奮闘するものの、その努力が家族を失望させる場面も見られます。
イーサン・ホークの代表作:
イーサン・ホークは、2001年に映画『トレーニング デイ』でアカデミー助演男優賞にノミネートされ、脚本を手掛けた『ビフォア・サンセット』(2004)およびその続編『ビフォア・ミッドナイト』(2013)では、共にアカデミー脚色賞にノミネートされています。代表作には『6才のボクが、大人になるまで。』(2014)、『プリデスティネーション』(2014)、『マグニフィセント・セブン』(2016)、『レイモンド&レイ』(2022)などが挙げられます。
マイハラ・ホーク(ルース役)
ルースの役柄:
ルースはスコットの25歳の娘で、自信過剰な一面があり、相手が年上であっても遠慮なく批判する強気な性格です。アマンダとは犬猿の仲。
マイハラ・ホークの代表作:
『ブラック・ミラー』(2011)のピア役や『モダン・ラブ』(2019)のタミ役など、幅広い役柄をこなす有望な若手として注目されています。最近では、ポール・ダノ主演のコメディドラマ『Dumb Money』(2023)にも出演し、その才能がさらに評価されています。
ケビン・ベーコン(ダニー役)
ダニーの役柄:
ダニーはスコットの家を設計・施工した地元の建築業者であり、同時に危機に備えた装備を持つサバイバリストでもあります。
ケビン・ベーコンの代表作:
『フットルース』(1984)やドラマ『ザ・フォロイング』(2013-2015)、映画『インビジブル』(2000)など、多数の作品で知られる実力派俳優です。また、自ら監督を務めた『チェイスの夏 Losing Chase』(1996)では、ゴールデングローブ賞で3部門を受賞するなど、多才な一面も持っています。
監督:サム・エスメイル
サム・エスメイルは、アメリカの映画監督、脚本家、プロデューサーとして活躍している人物です。特に、『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』というテレビドラマのクリエイターとして知られています。このドラマは、サイバーセキュリティ、ハッキング、そして現代社会の闇を題材にした人気作品で、エミー賞を受賞するなど高い評価を得ています。
また、制作総指揮には、元アメリカ大統領のバラク・オバマさんとそのご夫人のミシェル・オバマさんの名前も連なっています。
オバマ夫妻の製作参加にまつわる陰謀論を監督が否定
制作には大きな話題がありました。なんと元アメリカ合衆国大統領と元ファーストレディのバラク・オバマさんとミシェル・オバマさんの名前が製作総指揮の名前に連なっているではありませんか。
Forbsの記事によると、オバマ夫妻はの映画制作会社「ハイヤー・グラウンド・プロダクションズ」を立ち上げ、「終わらない週末」の他にも『Worth』や『Fatherhood』などの映画を手掛けていて、
『終わらない週末』ではエグゼクティブプロデューサーとして映画の制作に参加しました。
元大統領が災害映画の製作に関わっているということもあって、SNSでは陰謀論などもあったそうです。しかし、結局は噂であって事実無根だったと監督はコメントしています。
監督のサム・エスメイルは、オバマ元大統領が映画に与えた影響について「オバマ元大統領は映画好きで、原作小説を映画としてどう描くかに特に注力していました。彼はキャラクター、共感、災害要素に関してもアドバイスをくれました。すべては、良い映画にするためでした」と語っています。
また、オバマ夫妻の関与についての陰謀論に対しては「オバマ元大統領が参加したのは撮影が始まる数ヶ月前で、脚本はすでに完成していました。彼がシグナルを送ったという噂は完全に間違っています」と否定しました。
彼らはキャラクター描写や物語構成について貴重なアドバイスを提供しました。その影響で、本作ではスリル感だけでなく現実味も帯びた内容となっています。
アメリカの人種差別を風刺を考察
『終わらない週末』では、人種間や階級間の緊張感が鮮明に描かれています。
一例として上の画像のような画面分割ショットがあります。この手法によって白人と黒人との分断が強調されており、それぞれの立場や先入観にも目を向けさせます。
このシーンだけを見ると、黒人は屋外で白人は安全な家の中にいますが、皮肉なことにこの家の持ち主は黒人親子で白人夫妻はレンタルしている立場です。
また、地下室シーンでは上下二分割された構図から、人種的な階層も示唆されていると言えるでしょう。
家主であるGH親子(黒人親子)は、クレイ家族(白人家族)に自分のスペースを開け渡して、まるで召使のように居心地の悪い地下室で夜を過ごすことになります。
これはまるで、アメリカ大陸に先祖代々住んでいたネイティブアメリカンが、ヨーロッパの白人が大陸に来たことによって、土地を奪われ、何もない寒くて痩せた土地に強制的に住まわされていることの暗喩のようにも見えてきます。
スペイン語を話すおばさんの意味
またアメリカでの差別は黒人と白人に限ったことではありません。
メキシコと国境を接しているため、多くのスペイン系の人々がアメリカで生活しています。
作中では、クレイが街へ新聞を買いに車で出かけるシーンがあります。そこへ道でおばさんに止められます。おばさんは必死で助けを求めているようですが、スペイン語で話すので言っていることは全く伝わりません。
あの時のおばさんは何を伝えていたのでしょうか。会話の一部をご紹介します。
おばさんとの会話
- おばさん: 「やっと人に遭えた! 道に迷った… 家へ帰りたい!」
- クレイ: 「迷ってしまって… どこかわからない。」
- おばさん: 「あなたの電話貸して!」
- クレイ:僕のも使えない。
- おばさん:今日一日であなたしか人間をみてないのよ! 今すぐここから逃げ出さなきゃ!赤いガスを噴射している飛行機を見たのよ!それに50頭以上の鹿が森から飛び出して来たのも!お願い、家に帰りたいの。軍用機も見たけど飛び去ってしまって、もう誰もここにはいないのよ!これは化学攻撃なの!?
- クレイ:ごめん。(困り果てて逃走。)
クレイは結局スペイン語がわからないという理由で、叫びながらついてくるおばさんを放置して車で走り去って行きました。このシーンには移民問題への暗喩とも捉えられる要素があります。
アメリカとメキシコの国境には大きな壁があり、移民を排除しようとしている、その行動の暗示にも見えてきます。
まとめ
『終わらない週末』はただ単なる災害パニック映画ではありません。
この作品から得たメッセージこそ、「他者との共存」の難しさや偏見について考えさせてくれるものです。
それぞれ異なる背景や環境を持つ登場人物たち。その複雑さをご覧いただければと思います。この映画を見ることで、日本で住んでいると気づきにくい、背景の違う他人とのコミュニケーションの難しさや、他者への理解の難しさなどに改めて気付かされます。
新しい視点と自分自身の日常生活にも活かせる教訓になるでしょう。「共存」について再考する機会となれば幸いです。